株式市場 / PER・PBR / 債券と利回り / 信用創造 / バーゼル規制 / 外貨準備
金融市場は資金の需給をつなぐ経済の血流です。株式・債券の基本指標の読み方、信用創造のメカニズム、 国際的な金融規制(バーゼル規制)、外貨準備の役割、証券化のメリットとリスクまで体系的に理解することが、 金融経済学の試験対策の鍵となります。本ページでは、金融市場の主要概念を整理します。
株価の割安・割高を判断するには、複数の指標を組み合わせて分析する必要があります。 以下は試験頻出の主要指標です。
PERが低いほど割安とされます。例えばPER=15倍は「1年の利益の15倍の価格で取引されている」という意味です。
PBRが1倍なら「帳簿価額と同じ価格」、1倍未満なら「帳簿価額より割安」です。
| 指標 | 計算式 | 意味 | 割安・割高の判断 |
|---|---|---|---|
| 配当利回り | 配当 ÷ 株価 | 投資に対する配当の比率 | 高いほど「配当ベース」では魅力的 |
| ROE(自己資本利益率) | 当期利益 ÷ 自己資本 | 株主資本がどのくらい利益を生むか | 高いほど効率的な企業経営 |
| ROA(資産利益率) | 当期利益 ÷ 総資産 | 全資産がどのくらい利益を生むか | 業種間比較に有用 |
PERが低くても利益が減少傾向なら割安とは言えません。複数の指標を組み合わせて総合判断する必要があります。
債券(Bond)とは、企業・政府が資金を借り入れるために発行する貸付金証券です。 株式と異なり、償還期日と利息が事前に決定しています。
債券の利回りと価格には逆の関係があります。これは債券投資で極めて重要な概念です。
| 利回り | 定義 | 計算例 |
|---|---|---|
| クーポン利回り | 額面に対する年間利息 | 額面100万円、年間利息5万円 → 5% |
| 満期利回り | 購入から償還までの実質的な利回り | 購入価格90万円、クーポン5% → 利回りは5%以上 |
| タームプレミアム | 長期債の利回りが短期債より高い部分 | 長期金利が短期金利より高い時に発生 |
信用創造(Credit Creation)とは、銀行が預金者の資金を基礎に、 それ以上の金額を貸し出す仕組みです。経済全体のマネーサプライを増加させます。
例えば、預金準備率が10%なら信用乗数は10倍です。つまり、中央銀行が100万円の通貨を供給すると、 10倍の1,000万円のマネーサプライが創出される可能性があります。
信用乗数は理論値です。実際には、銀行が自発的に多くを貸し出さなかったり、 個人が現金を保有したりするため、理論値より小さいことが多いです。
バーゼル規制とは、国際的な金融システムの安定を目指し、 スイスのバーゼルに本部を置くBIS(国際決済銀行)が策定した自己資本規制です。
| 規制版 | 導入年 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| バーゼルⅠ | 1988年 | 自己資本比率8%以上を要求。信用リスク対象。 |
| バーゼルⅡ | 2004年 | 信用リスク + 市場リスク + オペリスクを対象。内部格付け活用。 |
| バーゼルⅢ | 2010年(段階実施) | 資本規制強化、流動性規制追加、レバレッジ比率新設。 |
銀行が貸し出した金額(特にリスク資産)に対して、自己資本がどのくらい充実しているかを表します。 高いほど、借金返済不可能が生じた場合の損失吸収能力が高いということです。
外貨準備(Foreign Exchange Reserves)とは、中央銀行が保有する外国通貨・外国債券・金などの資産です。
日本は経常収支黒字を背景に、世界的に見ても有数の外貨準備保有国です。 米ドル建ての資産が大部分(約60-70%)を占めており、安全資産中心の運用が行われています。
証券化とは、銀行が融資した債権(ローン)を証券化して投資家に売却し、 資金を回収する仕組みです。
| メリット | 説明 |
|---|---|
| 銀行のメリット | 資金を回収でき、新規融資に充当可能。バランスシートが圧縮。 |
| 投資家のメリット | 高利回り資産を取得。分散投資が容易。 |
| 経済全体 | 融資が活発化し、経済活動が促進される。 |
銀行が借貸債権を売却してしまえば、「貸し手としての責任感」が薄れ、 低信用度の借り手にも無差別に融資する傾向が生じます。これが2008年危機につながりました。
「自己資本比率規制の目的」と「各段階での進化」を整理しておきましょう。 特に2008年危機後の強化内容が重要です。
証券化は本来メリット(流動性向上、リスク分散)がありますが、 「貸し手の責任放棄」というモラルハザード問題も同時に理解する必要があります。
この記事の内容に対応する確認問題です。まず自分で答えを考え、「答えと解説を見る」で正解と解説を確認しましょう。このテーマを含む経済・金融の問題集(全問)や、本番形式(選択・採点つき)のトップページのクイズもご利用ください。
Q1. 金融機関が貸出金利を設定する際に参考にする代表的な金利指標はどれか?
正解:短期プライムレート
解説:短期プライムレートは優良企業向け貸出金利の基準となる指標です。
短期プライムレートは、信用力の高い優良企業に対して銀行が適用する最優遇の短期貸出金利を示す指標です。この金利は、短期金融市場の金利水準や中央銀行の政策金利の動きに連動して変動し、他の企業向け融資や個人ローン金利を決める際の基準として広く用いられます。したがって、貸出金利の全体的な水準や金融機関の貸出姿勢を把握する上で重要な役割を果たします。
Q2. 株式市場において『PER(株価収益率)』の計算式として正しいのはどれか?
正解:株価 ÷ 1株当たり利益
解説:PERは株価が1株利益の何倍かを示す指標です。
PER(株価収益率)は、企業が1株あたりどれだけの利益を生み出しているか(EPS)に対して、株価が何倍の評価を受けているかを示す指標です。一般に、PERが高いほど投資家が将来の成長を期待して株価が高く評価されていると考えられますが、一方で割高と判断される場合もあります。企業比較や市場全体の割安・割高を判断する際に広く用いられます。
Q3. 債券投資における『利回り』が上昇した場合、通常どのような価格変化が起こるか?
正解:債券価格は下落する
解説:利回り上昇(金利上昇)は債券価格の下落を意味します。
債券は発行時点で決まった利息(クーポン)を支払います。市場金利が上昇すると、新しく発行される債券の利率が高くなるため、既発債券の利息は相対的に魅力が低下します。そのため既発債券の市場価格は下落し、利回りが市場金利に見合うよう調整されます。利回りと債券価格は反対方向に動くという基本関係があります。
Q4. 『セキュリタイゼーション(証券化)』が金融市場にもたらす主な利点はどれか?
正解:資金調達の多様化とリスク分散
解説:証券化は金融機関が保有する債権を市場で流通可能な証券に転換します。
証券化とは、住宅ローンなどの債権を束ねて証券として販売する仕組みで、金融機関は債権回収リスクを投資家に移転しつつ新たな貸出余力を確保できます。市場全体ではリスク分散が進み、資金調達手段が多様化する一方、不適切な審査や過度な証券化が行われると金融危機の引き金にもなり得ます。
Q5. 『信用創造』が拡大する主な条件として正しいのはどれか?
正解:銀行貸出の増加と準備率の低下
解説:銀行が貸出を増やすことで、預金が増え通貨供給が拡大します。
信用創造とは、銀行が預かった預金の一部を準備金として保有し、残りを貸し出すことで新たな預金が生まれ、貨幣供給が増加する仕組みです。準備率が低く設定されているほど貸し出し可能額が増え、信用創造が拡大します。景気が好調で貸出需要が強い状況では、銀行は積極的に融資を行うため、信用の増加ペースも高まります。
Q6. 国際金融危機後に強化された『バーゼルⅢ規制』の主な目的はどれか?
正解:銀行の自己資本比率と流動性の強化
解説:バーゼルⅢは銀行の健全性を確保するため資本・流動性規制を強化しました。
2008年の金融危機を受け、銀行の自己資本の質と量を増やし、ストレス耐性を強化するためにバーゼルⅢが導入されました。具体的には普通株式比率の引き上げ、レバレッジ比率の導入、短期・長期の流動性規制の強化が行われ、金融システム全体の安定性向上を図りました。
Q7. 『資本コスト(WACC)』の上昇が企業行動に与える影響として正しいものはどれか?
正解:投資抑制と株価下落の圧力
解説:資本コストが上がると、企業は投資案件の採算性が低下し、慎重になります。
WACC(加重平均資本コスト)は、企業が必要とする資本調達全体の期待収益率を示します。WACCが上昇すると、投資案件の内部収益率がWACCを下回りやすくなり、新規投資が減少します。また投資家は企業価値の低下を織り込み、株価にも下押し圧力がかかります。
Q8. 『金融危機時のモラルハザード』を防ぐために求められる制度として最も適切なのはどれか?
正解:ベイルイン制度
解説:ベイルインは金融機関救済時に株主や債権者が損失を負担する仕組みです。
ベイルイン制度では、金融危機時に納税者ではなく銀行の株主や債権者が損失を負担します。これは経営責任を明確にし、過度なリスクテイクを抑制することでモラルハザードを防止する効果があります。欧州の銀行規制で特に導入が進んでいます。
Q9. 『タームプレミアム』が低下する局面で起こりやすい市場現象はどれか?
正解:長期国債利回りが低下しイールドカーブがフラット化する
解説:タームプレミアム低下は長期金利の構造的低下につながる。
投資家が長期債保有に対する追加的リスクプレミアムをほとんど要求しなくなると、長期金利が低下し、短期金利との差が縮まりイールドカーブが平坦化しやすくなります。
Q10. 『ヘッジ需要』と『投機需要』を区別する金融理論はどれか?
正解:ケインズの流動性選好理論
解説:ケインズは貨幣需要を3つの動機に分類した。
流動性選好理論では、取引需要・予備的需要・投機的需要に分けられ、投機需要は金利変動を予想した貨幣保有行動を説明します。
Q11. 『外貨準備』の主な役割として最も適切なのはどれか?
正解:為替介入や国際支払いに備えるための外貨保有
解説:外貨準備は国際金融取引の安全装置として機能する。
通貨危機時に為替介入を行えるほか、輸入支払いや外貨建て債務返済の源泉として国家の信用維持に重要な役割を果たします。
Q12. PER(株価収益率)が高い株式はどのような特徴があるか?
正解:市場が将来の高成長を期待しており、現在の利益比で株価が高い
解説:PERが高いほど市場の成長期待が高く、現時点では利益に対して割高です。
PER(Price Earnings Ratio)=株価÷EPS(1株当たり利益)。PERが高い株は「将来の高収益を期待した買い」が入っています。一般的に成長株は高PER、割安株・成熟企業は低PERになります。ただし業種によって適正水準が異なります。
Q13. 債券価格と利回りの関係として正しいものはどれか?
正解:金利(市場利回り)が上昇すると、既存債券の価格は下落する
解説:金利上昇→既存債券の相対的魅力低下→価格下落という逆相関があります。
市場金利が上昇すると、より高い利回りの新発債が出るため既存の低利回り債は魅力が落ち価格が下がります。逆に金利低下時は既存の高利回り債の価値が高まり価格上昇します。この逆相関関係は債券投資の基本原則です。
Q14. 信用創造とはどのような仕組みか?
正解:銀行が預金の一部を準備金として保有し、残りを貸し出すことで、預金総額が元の預金を超えて増加する仕組み
解説:部分準備制度により銀行の貸出が連鎖して預金総額が拡大します。
銀行Aが預金100万円のうち10万円(準備率10%)を手元に残し90万円を貸し出すと、借り手が別の銀行Bに預金→Bが81万円貸出→…と連鎖し、最終的に100万円の元預金が最大1000万円の預金に膨らみます。信用乗数は1÷準備率です。
Q15. BIS規制(バーゼル合意)が規定している主な内容はどれか?
正解:銀行がリスク資産に対して一定以上の自己資本を保有することを義務付ける
解説:BIS規制は銀行の自己資本比率規制(最低8%)を国際的に定めます。
BIS(国際決済銀行)のバーゼル委員会が策定するバーゼル規制は、リスク加重資産に対する自己資本比率の最低水準(国際基準行は8%)を定めます。バーゼルⅢでは流動性カバレッジ比率(LCR)や安定調達比率(NSFR)も追加されました。
Q16. イールドカーブ(利回り曲線)が逆転(逆イールド)するとき、一般に何を示唆するか?
正解:景気後退の前触れとされることが多い
解説:長短金利逆転(逆イールド)は景気後退の先行指標とされています。
Q17. 証券化(セキュリタイゼーション)の主な目的はどれか?
正解:流動性の低い資産を裏付けに証券を発行し、資金調達と分散投資を可能にすること
解説:資産を証券化することで流動性を生み出し、リスクを分散できます。
住宅ローン・自動車ローン・売掛債権などを束ねてSPV(特別目的会社)に売却し、それを裏付けとした証券(ABS・MBS等)を発行します。オリジネーターは早期資金化でき、投資家はリスク分散できます。しかしリスクの所在が不透明になる欠点も指摘されます。
Q18. 株式の配当利回りとはどのような指標か?
正解:株価に対する1株当たり配当金の割合
解説:配当利回り=1株当たり配当÷株価×100(%)です。
配当利回りは株式投資から得られる配当収入の「利回り」です。株価が低いほど、または配当が多いほど利回りは高くなります。高配当株を好む投資家はこの指標を重視します。なお、利益に対する配当の割合は「配当性向」と呼び別概念です。
Q19. 外貨準備高の主な役割はどれか?
正解:為替介入の原資確保と対外債務支払いの担保
解説:外貨準備は通貨防衛の介入資金と対外決済能力の信認を支えます。
外貨準備(主に米ドル建て国債・金等)は①投機的な通貨売り圧力への介入資金②輸入代金・外債返済等の対外決済の担保③国際信頼の維持に機能します。日本の外貨準備高は米国に次ぐ世界第2位水準(約1.2兆ドル超)です。
Q20. PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回ることはどのような状況を示すか?
正解:株価が1株当たり純資産を下回っており、解散価値以下で取引されている
解説:PBR1倍割れは解散価値以下の株価で、割安または成長期待なしを示します。
PBR(Price Book-value Ratio)=株価÷1株当たり純資産。1倍割れは「今すぐ会社を解散して純資産を分配した方が株式保有より価値がある」状態です。東証はPBR1倍割れ企業に改善策の開示を要請(2023年)しており、日本株の構造的課題として注目されます。
Q21. マクロプルーデンス政策とはどのような政策か?
正解:金融システム全体のリスクを監視・管理し、システミックリスクを防ぐ政策
解説:金融システム全体の安定を目的としたマクロ的視点からの監督政策です。
ミクロプルーデンス(個別金融機関の健全性監督)に対し、マクロプルーデンス政策は金融システム全体のリスク集積・連鎖を防ぐことを目的とします。景気循環に応じた資本バッファー要件や、LTV規制などが代表例です。BIS・FSBが国際的な枠組み作りを主導しています。
Q22. ゼロサムゲームとポジティブサムゲームの違いを金融市場の文脈で説明したものとして正しいものはどれか?
正解:投機はゼロサムに近いが、株式長期投資は企業成長を通じたポジティブサムになりえる
解説:投機は既存の富を再分配するゼロサムですが、投資は富を創造するポジティブサムです。
デリバティブ・FX取引などの純粋な投機は参加者間の富の移転でありゼロサムです。一方、株式への長期投資は企業活動を通じて新たな付加価値が生まれるためポジティブサムになりえます。この区別は資本市場の社会的役割を考える上で重要な視点です。