インサイダー規制・企業結合・高度会計基準・倒産・企業再生制度
上場企業は金融商品取引法による厳格な規制を受けます。インサイダー取引規制・企業結合会計・デューデリジェンス・IFRS基準・企業再生制度(会社更生法・民事再生法)は、M&Aや高度な会計・法務の場面で頻出の概念です。試験では各制度の目的と要件の正確な理解が問われます。
インサイダー取引(内部者取引)を禁止しているのは金融商品取引法です。上場会社の役員・従業員・主要株主等が、一般に公開される前の重要事実を知りながら株式等を売買することを禁止します。
内部者取引規制の目的は証券市場の公正性・透明性の確保と一般投資家の保護です。内部情報を持つ者が不当な利益を得ることを防ぎます。
SPC(Special Purpose Company)は、特定の資産の保有・証券化・プロジェクトファイナンスなど特定の目的のためだけに設立される会社です。 親会社との連結対象から切り離す(オフバランス化)ため、または資産の流動化(証券化)のために多く利用されます。
連結財務諸表を作成する際、親会社が子会社を支配していると判断される主な要件は議決権の過半数(50%超)の保有です。議決権が過半数に満たない場合でも、取締役会の過半数を占める等の実質支配がある場合は連結対象となります。
支配を得た企業(取得企業)が被取得企業の資産・負債を取得日の公正価値で計上する方法がパーチェス法(取得法)です。IFRSおよび日本基準ともに、企業結合の会計処理として原則採用されています。
| 手法 | 特徴 |
|---|---|
| 事業譲渡 | 特定の事業だけを売買。債務の承継には個別同意が必要。株主総会の決議不要な場合も |
| 会社分割 | 包括承継。債務も自動的に移転。株主総会の決議が必要 |
M&Aにおけるデューデリジェンスの主な目的は、対象会社のリスク・価値・問題点を事前に調査・評価することです。財務DD・法務DD・税務DD・ビジネスDDなどが実施されます。
親子会社グループを1つの課税単位として法人税を計算する制度です。主な効果は、グループ内の黒字会社と赤字会社の損益を通算することで税負担を軽減できることです。
発生主義とは、現金の収支に関わらず、経済的事実(取引・事象)が発生した時点で収益・費用を認識する会計原則です。(← 現金主義の対概念)
粉飾決算とは、実際の業績より良く見せるために財務諸表を意図的に偽造・改ざんする行為です。売上の水増し計上・費用の先送り・架空資産の計上などが典型例です。金融商品取引法違反・会社法違反として刑事罰の対象となります。
決算後に作成する財務諸表の目的は、経営成績・財政状態・キャッシュフローを利害関係者(株主・債権者・投資家等)に報告することです。
重要性の原則とは、金額的・質的に重要性が乏しい項目については、会計基準を厳密に適用せず、簡便な処理を認める原則です。例:少額の消耗品を費用処理するなど。
減損会計が適用される主な状況は、固定資産(有形・無形・のれん等)の帳簿価額がその回収可能額(使用価値または正味売却価額の高い方)を上回った場合です。事業環境の悪化・収益性の低下などがトリガーとなります。
IFRSにおける公正価値とは、測定日現在において、市場参加者間の秩序ある取引において、資産を売却または負債を移転する際に受け取るまたは支払うであろう価格(出口価格)です。
| 基準 | のれんの会計処理 |
|---|---|
| 日本基準 | 20年以内の期間で規則的に償却 |
| IFRS | 償却しない(非償却)。毎年CGU単位で減損テストを実施 |
会社が倒産した際に、同順位の債権者が保有資産から平等に弁済を受ける原則を債権者平等の原則と呼びます。特定の債権者のみが優先弁済を受けることは禁止されます(ただし、担保権者・優先債権者は別扱い)。
会社更生法の適用を受ける主な目的は、経営難に陥った株式会社を倒産させずに再建させることです。経営権は裁判所が選任した更生管財人に移り、現経営陣は退陣します(民事再生法とは異なる点)。大企業に多く使われます。
特別清算は、解散した株式会社が清算を進める上で問題が生じた場合に、裁判所の監督のもとで行う清算手続きです。通常清算の特殊な形態で、法人の存在を消滅させることを目的とします(民事再生・会社更生とは異なり再生を目的としない)。
企業再生ADR制度の特徴は、裁判所を使わずに金融機関との間で事業再生計画を合意・実行できることです。公表リスクが低く、事業継続しながら再生できるため、風評リスクを抑えながら再建が可能です。
経営者保証に関するガイドラインは、中小企業の経営者が個人保証なしに借入できる環境整備を目的として導入されました。主な目的は経営者の個人保証依存を減らし、果敢な事業挑戦と円滑な事業承継を促進することです。
ガイドラインで求められる自己資本管理の原則:法人と経営者の財務の分離(法人の資産・収益が経営者個人のものと混同されない状態の維持)。
この記事の内容に対応する確認問題です。まず自分で答えを考え、「答えと解説を見る」で正解と解説を確認しましょう。このテーマを含む会計・法務の問題集(全問)や、本番形式(選択・採点つき)のトップページのクイズもご利用ください。
Q1. 会計における『発生主義』とは何を意味するか?
正解:取引が発生した時点で記録する
解説:発生主義は現金の授受ではなく取引発生時に認識します。
企業会計原則では、収益・費用は現金の受払時ではなく、実際の取引発生時点で計上することが求められています。
Q2. インサイダー取引を禁止している法律はどれか?
正解:金融商品取引法
解説:インサイダー取引は禁止されています(金融商品取引法)。
企業の未公開情報を利用して株式などを売買する行為は、市場の公正を害するため金融商品取引法で禁止されています。
Q3. 「粉飾決算」とはどのような行為か?
正解:実際より業績を良く見せるため虚偽の会計処理を行うこと
解説:粉飾決算は虚偽の会計処理で業績を偽る行為です。
投資家や金融機関を欺くために不正な会計操作を行うことを粉飾決算といい、刑事罰の対象にもなります。
Q4. 企業の会計年度が終了した後に作成する財務諸表の目的はどれか?
正解:企業活動の結果を報告する
解説:財務諸表は企業の経営成績を外部に報告するための書類です。
損益計算書や貸借対照表などを通じて、株主や投資家などの利害関係者に経営の透明性を示します。
Q5. 金融商品取引法で定められている『内部者取引規制』の目的はどれか?
正解:投資家の平等性を確保するため
解説:内部者取引規制は投資家の平等性を守る制度です。
上場企業の未公開情報を知る者が株式売買を行うと、不公平な市場取引となるため金融商品取引法で禁止されています。
Q6. 会計基準における『重要性の原則』とは何を意味するか?
正解:重要でない事項は省略できる
解説:重要でない事項は財務諸表に影響が少ないため省略可能です。
重要性の原則は、財務諸表に与える影響が軽微なものについては簡便な処理を認める考え方です。
Q7. 『経営者保証に関するガイドライン』が導入された主な目的はどれか?
正解:中小企業経営者の個人保証の軽減
解説:経営者保証のガイドラインは個人保証の負担を軽くする制度です。
金融庁・中小企業庁の策定により、法人と個人の分離を進め、経営者の過剰な保証負担を減らすことを目的としています。
Q8. 会社が倒産した際に、債権者が平等に弁済を受ける原則を何というか?
正解:債権者平等の原則
解説:破産手続では債権者平等の原則が適用されます。
破産法により、特別な優先権を持つ債権者を除き、すべての債権者が公平に弁済を受けることが原則とされています。
Q9. 『特別目的会社(SPC)』が多く利用される目的として正しいのはどれか?
正解:資産の流動化や証券化
解説:SPCは資産の流動化・証券化などの目的で設立されます。
特定の資産を切り出し、リスクを分離して資金調達を行うための会社形態として利用されます。
Q10. 連結財務諸表を作成する際に、親会社が支配していると判断される要件として最も適切なのはどれか?
正解:議決権の過半数を保有している
解説:議決権の過半数保有が支配関係の基本判断基準です。
親会社は議決権の過半数を保有することで、子会社を支配下に置き連結対象とします。経済的実質支配がある場合も含まれます。
Q11. 会計基準における『減損会計』が適用される主な状況はどれか?
正解:固定資産の帳簿価額が回収可能価額を上回る場合
解説:減損会計は資産価値の下落を反映させる会計処理です。
将来キャッシュフローの減少などにより資産の回収可能価額が帳簿価額を下回った場合、減損損失を計上します。
Q12. 『企業結合会計』で支配を得た企業が取得する際の会計処理方法として正しいのはどれか?
正解:取得法
解説:企業結合会計では取得法が適用されます。
取得法では、取得企業が被取得企業の資産・負債を公正価値で認識し、のれんを計上することが求められます。
Q13. 国際会計基準(IFRS)で求められる『公正価値』の定義として正しいものはどれか?
正解:市場参加者間の通常取引での取引価格
解説:公正価値は市場参加者間の取引価格を意味します。
IFRS第13号では、公正価値を『測定日に市場参加者間で通常取引が成立する価格』と定義しています。
Q14. 『会社分割』と比較した場合の『事業譲渡』の特徴として正しいものはどれか?
正解:譲渡契約によって資産・負債を個別に移転する
解説:事業譲渡は包括承継ではなく個別契約で資産・負債を移転します。
会社分割は包括承継ですが、事業譲渡では譲渡契約で対象資産・負債を特定して移転します。
Q15. M&Aにおける『デューデリジェンス』の主な目的として正しいのはどれか?
正解:対象企業の財務・法務リスクを事前に確認する
解説:デューデリジェンスは買収対象のリスク分析を行う調査です。
M&Aにおいて財務・法務・税務・人事などの観点から対象企業のリスクや実態を把握する重要なプロセスです。
Q16. 『会社更生法』の適用を受ける主な目的はどれか?
正解:会社を再建し存続させるため
解説:会社更生法は企業再建・存続を目的とした倒産法です。
破産法が清算型であるのに対し、会社更生法は再建型の倒産手続であり、裁判所主導で再建計画を進めます。
Q17. 『連結納税制度』の導入による効果として最も適切なのはどれか?
正解:税負担の単純化と損益通算の可能化
解説:連結納税制度はグループ全体での損益通算を可能にします。
親会社と100%子会社間で所得を合算し、グループ全体で法人税を申告・納付する制度です。
Q18. 『特別清算』の特徴として正しいものはどれか?
正解:破産手続よりも迅速に会社を清算できる
解説:特別清算は裁判所の監督の下で迅速に清算を行う制度です。
会社清算の一形態で、債権者との合意を得ながら簡易的に清算を進めることを目的としています。
Q19. 企業再生ADR制度の特徴として正しいのはどれか?
正解:裁判所の手続きを経ずに債権者と協議できる
解説:企業再生ADRは裁判外での債務再編を可能にする制度です。
ADR(裁判外紛争解決)手続により、企業が債権者と協議を行い、再生を目指す法的整理の前段階の制度です。
Q20. 『経営者保証ガイドライン』で求められる自己資本管理の原則はどれか?
正解:法人と個人の資産を明確に分離する
解説:経営者保証ガイドラインでは法人と個人の分離を求めています。
中小企業の経営者が個人保証を免除されるためには、法人資産と個人資産を明確に分け、適切に管理することが条件です。
Q21. 会計における『のれんの償却』に関する日本基準とIFRSの違いとして正しいのはどれか?
正解:日本基準は償却を行い、IFRSは償却を行わない
解説:日本基準はのれんを償却するが、IFRSは償却せず減損テストを行う方式です。
日本基準では20年以内で定額償却を行いますが、IFRSでは定期償却せず、減損の兆候がある場合に評価します。
Q22. 金融商品取引法(金商法)における「インサイダー取引規制」の対象となる主体はどれか?
正解:上場会社の役員・従業員など内部者および情報受領者
解説:インサイダー規制:会社関係者・情報受領者(一次受領者)が対象。
インサイダー取引規制(金商法166条・167条):①会社関係者(役員・従業員・大株主・関係業者)が重要事実を知った場合の取引禁止、②情報受領者(会社関係者から情報を受けた一次受領者)も規制対象。違反には懲役・罰金の刑事罰と課徴金。
Q23. TOB(公開買付け)の義務的実施要件(金商法27条の2)はどれか?
正解:市場外で上場会社株式の3分の1超を取得する場合は原則TOBが必要
解説:市場外取引で1/3超の株式取得には強制TOBルールが適用される。
強制公開買付け:上場会社株式を市場外取引で買い付けて保有割合が3分の1超となる場合は、TOB(公開買付け)による方法が義務付けられる(金商法27条の2第1項1号)。市場内取引(立会内)は対象外。既に3分の1超を保有している場合も一定条件でTOB義務が生じる。
Q24. 有価証券報告書の提出義務がある会社として正しいものはどれか?
正解:上場会社および一定の非上場会社(株主数300人以上かつ資産額5億円以上等)
解説:有報義務:上場会社+株主300人以上・資産5億円以上の非上場会社等。
金融商品取引法24条:有価証券報告書の提出義務者:①金融商品取引所に上場している会社、②有価証券届出書を提出した会社で一定の者(公募の実績)、③所有者数・総資産額が一定基準以上の非上場会社(みなし上場)など。決算後3ヶ月以内に提出。
Q25. 社債を発行する際の「起債条件」に含まれないものはどれか?
正解:発行会社の役員報酬の詳細
解説:役員報酬の詳細は起債条件ではなく別途開示事項。
社債の起債条件:発行総額・表面利率(クーポン)・期間・償還期日と方法・担保の有無・特約(コベナンツ)・格付け・発行価格などが含まれる。役員報酬の詳細は有価証券報告書に開示する別の情報であり、社債の個別条件ではない。
Q26. 証券会社が投資家に対して負う「適合性原則(Suitability Rule)」とはどれか?
正解:顧客の知識・経験・財産・投資目的に適合した商品のみを勧誘・販売する義務
解説:適合性原則:顧客属性(経験・財力・目的)に合った商品を勧める義務。
適合性原則(金商法40条):金融商品取引業者は、顧客の知識・経験・財産の状況・投資目的に照らして不適当な勧誘を行ってはならない。例:高リスク商品を投資経験の乏しい高齢者に勧誘することは違反。消費者保護の根幹となる規制。
Q27. デリバティブ(金融派生商品)の基本形3種類として正しいものはどれか?
正解:先物・オプション・スワップ
解説:デリバティブの基本3形態:先物・オプション・スワップ。
デリバティブ(Derivative):原資産(株・金利・為替・商品等)の価値から派生する金融商品。基本3形態:①先物(Futures):将来の特定日に特定価格で売買する契約、②オプション(Option):将来売買する権利(義務ではない)、③スワップ(Swap):将来のキャッシュフロー交換(金利スワップ等)。
Q28. ETF(上場投資信託)の特徴として正しいものはどれか?
正解:証券取引所に上場され、株式と同様にリアルタイムで売買できる
解説:ETFは取引所上場型で株式と同様に売買できる投資信託。
ETF(Exchange Traded Fund:上場投資信託):日経平均・TOPIXなどの指数や金・原油などの商品に連動するファンドが取引所に上場され、株式と同様に売買できる。特徴:①リアルタイム売買、②一般の投資信託より低コスト(信託報酬が低い)、③分散投資効果。
Q29. 「特定投資家(プロ投資家)」制度における適格機関投資家の典型として正しいものはどれか?
正解:銀行・保険会社・証券会社・投資信託などの金融機関
解説:適格機関投資家=金融機関・年金基金等の専門的投資家。
適格機関投資家(金商法2条3項1号):投資判断能力・資金力を有する機関投資家として内閣府令で定める者。銀行・保険会社・証券会社・投資信託・年金基金・政府・中央銀行などが該当。適格機関投資家向けの私募(QII限定私募)には開示規制が大幅に緩和される。
Q30. 金融商品取引法における「有価証券の募集」と「私募」の分類で、適格機関投資家のみを対象とする「私募(適格機関投資家向け)」の特徴はどれか?
正解:開示規制が不要または軽減され、機動的な資金調達が可能
解説:QII向け私募は開示義務が緩和され迅速・低コストな資金調達が可能。
有価証券の募集・売出しには原則として有価証券届出書・目論見書の作成・提出(開示義務)が必要。ただし適格機関投資家のみへの私募(少人数私募も含む)は開示義務が免除または軽減される。プロ投資家には情報格差が少なく保護が不要との考え方に基づく。
Q31. 市場を通じた「空売り(Short Selling)」において「裸の空売り(Naked Short Selling)」が規制される理由はどれか?
正解:株券を借りずに売却するため決済不履行リスクと株価不当下落のリスクがあるから
解説:裸の空売りは借株なし売却で決済不履行リスクが高い。
空売り(Short Selling):株式を借りて売却し、後に安値で買い戻して返却する取引。通常は株を借りてから売る(カバードショート)。裸の空売り(Naked Short Selling)は株式を借りずに売却し、決済時に調達する取引。決済不履行(Fail to Deliver)リスクが高く、株価下落を人為的に増幅する恐れがあるため多くの国で規制される。
Q32. 証券アナリストが企業分析レポートを作成する際に求められる「フェアディスクロージャー規制」の内容はどれか?
正解:上場企業が特定のアナリスト等に重要情報を選別提供した場合、同時に広く公表することを義務付ける
解説:フェアディスクロージャー:情報の選択的提供後の同時公表義務。
フェアディスクロージャー規則(金商法75条以下、2018年〜):上場企業等がアナリスト・機関投資家等に対して未公表の重要情報を意図せず提供してしまった場合、速やかに当該情報を開示しなければならない(同時開示義務)。情報格差による不公正取引の防止が目的。
Q33. 信用取引における「委託保証金率」(最低維持率)を下回った場合に証券会社が行う手続きはどれか?
正解:追加保証金(追証)の請求または証券会社による強制決済
解説:追証(追加保証金)か強制ロスカットが信用取引のリスク管理手段。
信用取引:証券会社から資金・株式を借りて取引する手法。委託保証金(担保)に対して維持率が基準(通常20〜30%)を下回ると、証券会社は投資家に追証(Margin Call)を請求する。一定期間内に対応がなければ証券会社が強制的に建玉を決済(強制ロスカット)する。